内定通知


 学校訪問の日からちょうど1週間がたった水曜日、就職主任のK先生が、授業の終わった後に、
「この前の会社から何か連絡ありましたか?」
と聞いてきた。
そのときはまだ全く連絡はいただいていなかったので、そう答えると、
「おかしいですねぇ。もうそろそろ来てもいい頃なんですけど・・・。会社の中でどこか引っかかっているんでしょうか」
とか俺を不安にさせてくれるに十分なことばかり行ってくれた。
特にその先生は、この大学に来るまでに数々の企業のコンサルティングを務め、その手の本では有名なものを出版しているような人だったので、こんなことを言われると俺の不安は頂点に達した。
そこで、授業が終わった後俺の担当の先生のところに行って、これからどうやって相手の様子をうかがうかについて、いろいろと打ち合わせをしていた。
 それからなんだかほかの話しも含めて先生と1時間程度話し込んでいると、K先生がなにやら1枚の紙を持ってその部屋に現れた。そして、
「先日はお伺いした際、いろいろと対応して頂き有り難うございました。
大変お待たせいたしましたが、社内で充分に検討いたしました結果、TomGさんを」
まで読み上げて止めたので、かなりびっくりしたが、それこそが俺の待ち望んでいた内定通知だった。
 そこでお礼と今後のことについてを話し合う意味で、会社の方に電話をかけて、お礼と入社させて頂くことができてとても嬉しいと言うことをお伝えした。
 本当にこの瞬間は嬉しかった。今まで苦労して学校と交渉したり、ボランティアさんを頼んだり、悪戦苦闘しながら自己PRを書いたことなど、いろいろなことが走馬燈のように浮かんで、胸がいっぱいになる思いだった。
 家に帰ってから就職活動でお世話になった方や両親に電話をかけて、内定を報告した。

 世間では不況の嵐で、健常者でも就職が難しいと言われる中、このようないい結果を迎えられたことは、本当に運がよかったと思う。
これもこれまで私を支援してくださった方々のおかげであると心より感謝している。本当にありがとうございました。
 もちろん俺の内定は、社会人になる切符を手に入れたに過ぎないことで、本当の意味で大変なのはこれからだと思っている。
特に今まで、盲学校やこの大学など、周りに同じ視覚障害者がいる環境でしか育っていない俺には、どんな困難が待ち受けているか分からない。
それでも、できる限りがんばって、自分の夢の実現に向けて歩いていきたいと思っている。


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