単文節変換のすすめ


 漢字変換。コンピューターを使いこなしていく上で、欠かすことのできないこのシステムだが、どうも視覚障害者はこれが苦手な人が多い。
 もちろん自分もこの作業は非常に苦手なのだが、最近これに関しておもしろいことを発見した。
 それは8月の後半からだったろうか、BLPCのメンバーの一人で、晴眼者の新井君が、このWebサイトをチェックして、漢字の間違いを指摘するメールを送ってくれるようになった。
それも毎日必ず欠かさずに日記をチェックし、新しいコンテンツが増えた場合には、これもちゃんとチェックして間違いを指摘してくれた。
最初の内は俺もこんな面倒くさいことを毎日のようにやっってくれる彼に対して、感謝の気持ちでいっぱいだったのだが、ある日、俺がとんでもない変換ミスをして、彼に思いっきり笑われてからは、自分の書く文章が間違っていないか、今まで以上に気にするようになった。
そこで俺は考えた。どうして俺はこんな下らない変換ミスをしてしまったのだろうかと。
 考えてみると、こんな下らない変換ミスは、中学生の頃「AOK」という音声ワープロを使っていた頃には発生しなかった。昔俺が授業で作ったファイルを引っ張り出して、漢字の間違いを探してみたのだが、そこにも、こんな変なミスは無いのである。
 そこで俺は気がついた。昔はパソコンに慣れていなかったので、パソコンから出力されてくる音声をちゃんと最後まで聞いて漢字を選んで確定していた。
ところがだ、最近では飯を食っているときと寝ているとき以外はほとんどパソコンしかやっていないほどにパソコンという道具に慣れ親しんでしまったため、ついついパソコンが読み上げてくれている漢字の説明を、最後まで聞いていなかったことに、今更ながら気づかされたのである。
 もう一つ、当時のAOKワープロと、今使っているシステムには大きな違いがある。それは、「連文節変換が可能かどうか」というものだ。
AOKワープロは、独自の漢字変換システムを使っており、それは連文節変換をサポートしていなかったため、文節ごとに変換して、確定キーを押す仕掛けになっている。
しかし、今使っている日本語変換システムのATOKはもちろん、Windows標準添付のMS-IMEだって、連文節変換に対応している。
 元来面倒くさがりな俺は、もちろん、今までかなり長い文章を打ち込んで、変換キーを押していた。そして、そそっかしく、最初の漢字があっていると分かった時点で、ろくに音声も聞かないでエンターキーを押して確定していたのである。
これではどう考えても変換ミスが多発するはずだ。
 しかし、連文節変換をして、最後まで音声を聞くというのも面倒くさく、もし途中の漢字が間違っていると、そこまでカーソルを持っていって修正しなければならない。
漢字が間違っているぐらいなら別の漢字候補を選択すればいいのだが、途中で入力を間違っていることを発見したり、文節の区切りを間違っていることを発見したりすると、ほとんどの場合ESCを押してすべてクリアして、打ち込み直した方が早いぐらい、今の漢字変換システムはこれを修正するのが面倒くさい。
 そこで俺は考えた。それは、「初心忘れるべからず」の論理に基づく方法で、今のこの時代に、単文節変換にきわめて近い方法で入力しようというものである。
 幸いにも、新井君が2ヶ月間ほど俺のミスを指摘してくれていたおかげで、俺が、そしてATOK15が、どんな変換ミスをやらかすかと言うことを、少し分かってきたので、その場に応じて細かく変換を行うようにしてみたのである。
 するとこれまた不思議なぐらい、漢字変換のミスがなくなった。もちろんこれは自己評価などではない。
俺はこれを実証するために、おもしろい実験をやってみた。

 その実験というのは、新井君が「最近変換ミスが少ないですねぇ」とか言ってきたので、
「目の見える彼女ができたから、その子が直してくれるんだよ」
と言ってみたのである。
 彼は本当に正直な人間なので、もしその次の日に漢字変換のミスが多くなっていれば、
「やっぱり会長変換ミス多いですよ。嘘つかないでくださいよ」
と怒られるはずだ。
 ところが、あの疑い深い彼が、素直に信じ込んでしまったのである。

 それと、このページに文章を載せてくれている、にゃすこさんも、「最近変換ミス少なくなったねぇ」とか言ってくれた。
そんなわけで、視覚障害者の方々の中で、もし漢字変換のミスでお困りの方いらっしゃいましたら、きわめて単文節変換に近い方法で漢字変換をやってみることをおすすめしたい。


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