CQ合戦
3.70学生集団もそこそこ大きくなり、周りの人からも「この周波数に学生集団ができた」ことを認められるようになった。
もちろんこのころはメンバーもどんどん増えていた。そうなってくると、今度はいろいろと面白い遊びを始めるもので、最初に始めた遊びが「CQ合戦」だった。
その日俺は夜の6時ごろ無線機のスイッチを入れて、
「フレンド各局聞いてませんか、こちらは7M3XXX」
と呼びかけたが、なんだかみんなまだ出てきていなかったらしく、ちょっと立ってからNさんが応答してくれた。
実はこの「フレンド各局」というのは、言葉のとおり「お友達」という意味の無線用語だが、この当時3.70学生集団のメンバーがメインで上のような呼び出しをすると、「3.70学生集団各局」と解釈されていた。だから、3.70に所属している学生が上のような呼び出しをすると、その学生局の友達である「大人」は、ちょっと待ってから学生が出てこないときに声をかけてくれるようになってしまっていたのだ。
そんなわけでその日は、Nさんと久しぶりに話をしていた。Nさんの仕事の話や俺の学校の話、3.70学生集団の話など、久しぶりだったのでかなり盛り上がった。話が終わって気が付いてみると、11時を過ぎていたから、かなりの長話をしたのだが、寝るにはまだ早すぎる時間だったので、誰かいないかなあと3.70を覗いてみると、なんだか面白そうな話が始まっていた。
これから1時間みんな一人一人別の周波数に散らばって、CQ出そう!!それで、一番多くの人と話した人が勝ちだ!!
という話だった。これが最初のCQ合戦の始まりだった。
ちなみに俺は、最初のCQ合戦が始まる直前に乱入して、1位を獲得してしまった。
さて、1回目のCQ合戦が終わってみるとみんないっせいに
「またやろう!!」と言い出した。そこでつきに1回CQ合戦をやるようになった。
こうして始まったCQ合戦は、ルールもどんどんしっかりと決まり、案外長く続いた。このルールだが、学生のやる遊びなので、もちろんみんながみんな、いいアンテナを持っているわけではない。そこで無線機の出力が弱い人や、アンテナの小さい人、住んでいる場所が悪くて電波の届きにくいい人を考慮して、以下の様に作られた。
- 一人とつながって話をすると1ポイントになるが、メンバー同士お互いにつないで話をするのは禁止。
- パチンコおじさんがCQ合戦中の監視を行い、反則をやる人がいないかチェックする。
- 反則をすると減点3とする。
- YL局(女性)とつながったら3ポイントとする。
- その日のキー局とつながると5ポイント(もちろん直接キー局の呼び出し禁止)。
- キー局は参加者全員が交信可能な局で最近しょっちゅうメインでCQを出している局の中から、パチンコおじさんが決める。
- 不正行為防止のため、その日のキー局は、開始直前に決める。
- キー局はもちろん学生でなくてもかまわない。
こんな感じだ。
だから以下に多くの人と話しても、その人が男性ばかりでは点数になりにくい。かといって、アマチュア無線をやっている女性は少ないので、なかなかつながりにくい。そこでキー局とつながるのが、勝利を獲得する上での最大のキーポイントになる。
そんなわけでこのCQ合戦は、設備面で弱い人でも優勝のチャンスがあり、みんなで楽しめる格好のお遊びだった。
補足
上で「フレンド各局」というのが「友達」という意味になると書いたが、似たようなものとして「ローカル」というのがある。本来の意味の上では全く違う二つの言葉であるが、無線用語ではほとんど同じ意味で使われている。たとえば、自分の親しい人をメインで呼び出したいときには、
「フレンド各局聞いてませんか」とか「ローカル入感[1]ないですか」のあとに、自分のコールサインをつけて呼び出すのである。
語句解説
- [1]入感
- 聞いている、もしくは相手の話の内容を理解できる程度の電波状態である。
- しょぼい
- 弱い、もしくはぼろい。
- しょぼ波
- 弱い電波。
- しょぼい設備
- 貧弱なアンテナやぼろい無線機など。
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