Yレピーターで暴れまくり
さて、今回は最初からごく解説である。
この小を読むためには、タイトルにもあるところの「レピーター」とは何かをわかっていないとまったく本章の意味が理解できないし、面白くない。
語句解説
- レピーター
- アマチュア無線における中継局。弱まってしまった電波を山の上に置かれたレピーターという中継局を通じて、別の周波数に変えて電波を強くして再送信してもらう。このことにより、直接交信できない相手であっても、レピーターの力を借りることで交信が可能になる。レピーターの役目はそれだけではない。レピーターそのものがかなり高くて電波の届きやすい場所に設置されているので、近くにレピーターがあれば、短いアンテナであっても遠くの人と交信することが可能になる。
- レピーターを落とす
- レピーターというのは上記のとおりアマチュア無線における中継局の役割を果たしている。しかもその数は限られており、使いたい人がたくさんいる。そこでレピーターには使い始めてからのタイムアウト時間(使っていい持ち時間)が設定されている。このタイムアウトを逃れるために、マイクを離してからしばらく時間をおき、レピーターの時間をリセットする。これによって、レピーターを長時間利用しつづけることが可能になる。
レピーターのマナー
- 話は簡潔に済ませる。
- 待っている人のことも考えて、できるだけ早く通信を終わらせる。
- レピーターを使う前には「お借りします、話し終わったら「ありがとうございました」の一言を忘れずに。
- レピーターを占領しない。
本文
3.70学生集団の成長は、かなりのスピードで進み、参加局も広範囲に拡大してきた。それに伴って、メンバーの設備もますます多様化し、大きなアンテナを上げている人や、ベランダに自動車用のアンテナだけを取り付けてハンディー無線機をそれにつないで参加するメンバーも現れた。
こうなってくると、問題になるのはメンバー全員が交信できないという現象が発生することである。もちろん大きなアンテナを持っている人は設備の小さなメンバーのほうにそのアンテナを向けて、電波を強くしたりするが、その影響で、アンテナの向きとは逆側にいるメンバーとは通信できないということになってしまい、調整が難しくなる。
そこで俺たち3.70集団は、レピーターを使い始めてしまったのである。上述したとおりレピーターというのは長話のできる空間ではない。しかし、学生集団の会話というのは大抵は長く、夜通し続くことだって珍しくはなかった。そんなわけでこの集団がレピーターに出没してしまうと、どうなるかは読者の皆様にも想像していただけると思うが、俺たち3.70学生集団が、レピーターをのっとってしまうことになる。
最初に俺たちの犠牲になってしまったのは、栃木県南部にあるM町に設置された「Mレピーター」だった。しかしこのレピーター、やたらといい場所に設置されているため、利用者はかなり多い。そんなところに俺たち無法者が出現したとなれば、大人は黙っていない。しかもこの無法者が、連絡にでも使っているのならいざ知らず、ここを基地に使用としているのだ。
ということで、出現後30分とたたないうちに、思い切り怒られる羽目になった。
そこで懲りてしまうというのが普通かもしれないが、俺たちはそうではなかった。基地(3.70)に戻って作戦会議をはじめた。
作戦会議をはじめてみると、それまで馬鹿話をしていたやつの中に、
「レピーター占領するのはよくないよ、やっぱりつながりにくくても我慢しようよ。」
とか言い出したやつがいた。それまでそいつは、一番馬鹿なことばかり話していて、不良みたいなやつだった。しかしそんなやつがいきなり真剣になったので少々びっくりしたが、ほかのメンバーは
「やっぱりあそこのレピーターは止めて、ほかのレピーター探そう!!」
という意見でまとまった。
それから俺がレピーターの周波数表を見ながら、この辺でみんながつながりそうなレピーターを探し始めた。
すると、俺の住んでいる町の近くにY市というところがあり、そこにもレピーターが設置されているということがわかった。しかもそのレピーター、そんなに利用者は多くないという。まあ、こんな格好の穴場を見つけてしまった俺たち無法者は、すぐにそちらに向かった。
さて、向かった先のYレピーターは、うわさに聞いていたとおり、非常に心地よかった。メンバー全員がそのレピーターまでは電波を飛ばすことができたし、もちろんそのレピーターからの電波も全員が受信することができた。
それから俺たち3.70学生集団は、基地に集まってメンバーがぞろぞろと集合し始め、全員での交信が難しくなってくると、Yレピーターに出現し、平気で夜通し語り明かしていたのだった。
今考えてみればこんな無法な行動をよくもできたと思う。しかも、この行動に対して妨害電波やほかのレピーター利用者からお怒りを頂戴しなかったのは奇跡に近いと思う。
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