緊急出動!女子高生出現
発展を続ける3.70学生集団であったが、ひとつだけメンバー全員には大きな不満が合った。それは、この学生集団には女の子が入っていないことだった。
ご存知のとおり、アマチュア無線というのは非常にメカニカルな趣味であり、やっている人のほとんどが男性である。しかも時々女性が出てきたとしても、それはお父さんが無線をやっていて娘にもやらせてしまったとか、無線をやっている人の奥さんなどで、学生はほとんどいないわけである。だから3.70学生集団に限らず、ほかの学生集団にとってもこの状況はますます深刻なのだ。
しかし、同じ県内で当時勢力を持っていた宇都宮学生集団には、2人か3人の女の子が所属していたので、俺たちのこれに対する希望は日増しに高くなっていた。
そんな時、Nさんから、自分のフレンド局でアマチュア無線をやっているある高校の先生が、何人かの女の子に無線の魅力を話したところ、4人の女子高生が免許を取ったとの情報が飛び込んできた。それによると彼女らは3人が開局準備中であり、一人がハンディー機を持ってすでに430Mhz帯でCQを出したりし始めているとのことだった。しかし、Nさんもその電波を受信したことがなく、俺の家からはハンディー機での通信が不可能な距離に住んでいたので、ちょっと難しいかもしれないと感じていた。
ところが、あのパチンコおじさんが、偶然彼女とつながったと連絡してくれた。しかもおじさんがCQを出していると、向こうの方からお声がけがあったのだという。もちろんおじさんは俺たちの集団を彼女に紹介してくれたということだったので、ブレークが入るかもしれないという連絡だった。もちろんその日から俺たちメンバー全員は、受信機の感度をなるべく高くし、ブレークタイムを長く取りながら話すように心がけたが、残念なことに俺たちよりも宇都宮集団のほうが数段上手であったため、彼女をこちらの集団に引き込むことはできなかった。
その日はいつものようにみんなで3.70に集まって、CQを出していた。このときの人数はいつもより少なめで3〜4人ぐらいだったと思う。
CQを出している俺たちに、突然Nさんがブレークしてきて、すごい情報をくれた。それによると、開局準備中だった3人のうち、一人がハンディー機ではなくモービル機にモービルアンテナでM町から開局したという話だった。しかも、彼女は最近頻繁にCQを出して仲間を探しているが、アンテナが小さいのでなかなか応答してくれる人がいないとのことだった。もちろん俺の住んでいる町の南側に住んでいるNさんからは、その女の子からの距離は俺より遠かったが、Nさんがものすごいアンテナを持っている人だったので、交信できたとのことだった。
「今回ばかりは負けていられない!!」俺はそう強く誓った。
このチャンスを逃したら今度はいつになるのかわからないのだ。
そこで俺はセンター局としてすべてのメンバーに異例の指示を発したのだった。
「全員メインをできる限り監視し、彼女がCQを出していたらフルパワーでお声がけして話の合間にメンバーを招集してください。」
もちろん俺もその日から何をやっていても無線をつけっぱなしにすることにした。
さて、何日かこの体制を続けていると、ある日メンバーから
「3.26でそれらしい女の子が誰かと話している模様」
との緊急連絡が入った。
そこで俺たち無法者は、3.70に集合し、その話を聞いて、彼女にはどんな話をしたら喜んでもらえるのか等、メンバーの中でどの局がもっとも彼女との電波状態がいいのかなど会議をはじめた。ところが、このときとんでもないことが発生したのだった。
3.26を聞きながら会議に参加していたメンバーから突然「CQ出してるぞ!!」との連絡が入った。
彼女は別の人とゆっくり話していたというわけではなかったのだ。そう、CQを出していて偶然つながった人との話が長引いていただけのことだったのである。
そこでメンバーは早急に3.26に移動し、俺がフルパワーでお声がけをした。
もちろん作戦は大成功!!20分ぐらいのうちには彼女を3.70につれてくることができたのだった。
語句解説
- ブレークタイム
- ある人が話してから次の人が話すまでの何も電波の出ていない空白時間。
- お声がけ
- CQに対して応答すること。
- モービルアンテナ
- 車につける専用アンテナ
- モービル機
- 車につける無線機。ハンディー機に比べ送信出力は大きく、固定機に比べ値段が安いので、自宅で利用する無線機としても多く使われている。ちなみに学生各局にもモービル機を使用している人は多い。
- 固定機
- 自宅に設置して使う高級な無線機。
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