ふとしたことでの仲間割れ


 栃木学生集団は、レピーターで暴れまくったり、CQ合戦をしたり、それまで順調に勢力を伸ばしてきた。学生集団としての無線上での位置も確保でき、メンバー同士の喧嘩もそれまではなかった。
 そんな穏やかな日々が、ふとしたことで崩壊しそうになったのは、俺が 中学2年の冬のことだった。
その日もいつものように3.70に仲間が集まって話していたのだが、そのうちの一人が、当時問題になっていた某宗教団体の音楽の入ったカセットテープを流し始めたのである。それを聞いて俺達も俺達で
「それ欲しい!!」とか、「それどこで手に入れたの」などと盛り上がってしまったのだった。人間の勢いというものはすごいもの出、盛り上がった俺達は、
「このテープを流しながらメインでCQ出したらどうなるんだろう?」とか言う話にまで発展していた。
そこで俺達はそいつを筆頭にして、こともあろうに当時大混雑していた430MHz帯のメインチャンネルで、その音楽を流しながらCQを出してしまったのである。
すると、メインを聞いていた多くの人々が、怒り心頭で俺達の基地、3.70に集まってきてしまった。そしてむちゃくちゃ起こられてしまった俺達メンバーの中でも、
「おまえが悪いんだよ」とか、
「これやろうって言ったのはおまえじゃねえかよ!!」とか、大喧嘩が始まって、収拾のつかない状態になった。
そしてそのとき以来、グループが二つに分かれてしまったのだった。
一方のグループは「こんな無謀なことが始まろうとしているのにとめなかったセンター局が悪い」と主張するグループ、
もう一方は、「こんな音楽のテープを最初に流したやつが悪い!!」と主張するグループだった。
 そしてとうとう、俺達3.70学生集団は、音楽を最初に流したやつがセンターを勤めるグループと、俺がセンターを勤める二つのグループに分裂し、それぞれが独立したグループとして動き始める結果となってしまった。
 しかし、そのもう一方のグループのセンター局というのが、無線に対してあまり熱心な日とではなかったため、すぐにグループはばらばらになってしまい、一時は向こうのグループに言ってしまったメンバーが、ぼちぼち俺のほうのグループに戻ってきてくれたのだった。
もちろんそのことがきっかけか何かはわからないが、そのグループの崩壊と同時に無線に出てこなくなってしまったメンバーも何人かいた。しかし、分裂してしまったメンバーがまたひとつになったことで、俺達3.70学生集団の結束は、今まで以上に硬いものになり、それまでよりもずっと固い絆で結ばれたように思う。

センターの休眠は学生集団崩壊を招く


 上で
「そのもう一方のグループのセンター局というのが、無線に対してあまり熱心な日とではなかったため、すぐにグループはばらばらになってしまった」
と書いたが、どうしてセンター局一人が無線に熱心ではないと、学生集団が崩壊してしまうかについてここで書いておきたい。
 こういう書き方をするのはどうかと思うが、若者というのは常に人との「コミュニケーション」を求めている。そしてその結びつきが大きければ大きいほど、その集団は自分にとっての重要な「支え」となってくれるのだ。
 その結びつきを強化させるためには、リーダー自信のリーダーとしての素質はもちろんだが、もっと重要なのが、リーダーが自分の持っている集団に対して、どれほど熱心になれるかということも大きく関係してくるのである。
 たとえばリーダーが熱心でないと、ちょっとした用事やほかの友人と遊びたいなどの理由で、所属メンバーが呼び出しても無線に出てこない時間帯が増えてしまう。
そして、呼び出しても出てこないとなると、メンバーは寂しくなってしまい、ほかに自分の居場所を探してしまうわけである。もちろんメンバーの話し相手はセンター局に限られているわけではないが、ひまになったメンバーの一人が無線でもやろうかと重い、電源スイッチを入れて3.70を聞いてみた。しかし、誰もまだ出てきていない。そこで、
「フレンド各局聞いてませんか?」
と呼び出しをしたときに、誰からも応答がないとさびしくなってしまう。
そんな時、大抵のメンバーはほかの学生集団が話しているのを聞き、その中に知っている人がいれば
「ああ、寂しいからここにでも乱入するか?」
とほかに自分の居場所を見つけてしまう。もし自分の居場所が見つからない日とは、その日はあきらめて次の日にまた出てくる。しかしこんなことが続いてしまうと、その人の中での無線というものの占める位置は次第に小さくなり、やがては無線そのものを止めて、ほかの趣味を見つけてしまうという結果を招くことになる。
 しかし、反対にセンター局が、自分の持っている学生集団に対して真剣な日とであれば、できる限り無線の電源を入れて、メンバーとのコミュニケーションを取れる体制を作り、いつでも暇なメンバーと話せるようにしているのだ。
さて、ひまになったメンバーの一人が、無線でもやろうかと重い、電源スイッチを入れて3.70を聞いてみた。しかし、誰もまだ出てきていない。そこでメインに移って、 「フレンド各局聞いてませんか?」
と呼びかける。そのとき、センター局が真っ先にその局を呼んでくれる。そしていつもの周波数に移って話をはじめるわけだ。
すると同じようにひまになったメンバーがさて、無線でもやるかと電源を入れて3.70にあわせる。ああ、いたいた、
「ブレーク」
「ブレークさんどうぞ」
「こんばんは、○○です」
となって、集合し始めることができるわけだ。
 このように学生集団のなかで、センター局の与える影響というのは計り知れないものがある。
だからセンター局が受験や就職などで忙しくなったり、ほかの趣味を見つけて無線に対する熱心さを失ってしまったとき、その学生集団は99パーセントの確立で崩壊してしまうのである。

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