集団移動
1学期も終わり、いよいよ待ちに待った夏休みがやってきた。
俺はずいぶん前から「夏休みになったらみんなでどこかに遊び行こう!」と決めていた。
だから夏休みに入ったその日、早速それをメンバーに提案した。
するとみんな大賛成で、移動運用に行こうと言うことはすぐに決まった。
しかし、問題は足だ。栃木学生集団は北から南まで県内各地のメンバーが所属している。もちろんせっかくの計画だから、みんな参加したかったが、アナカリスさんの車だけでは、絶対にみんなを目的地まで移動させることは不可能だった。
しかもこれには人だけではなく、重い重い無線機やバッテリー、そして長いアンテナなどの機材も加わることになるので、なおさらそんなことは不可能に見えた。
そんなとき、例のお姉さんが「あたし車出すよ」と行ってくれた。しかもお姉さんの車はかなりお大きいやつで、機材もそこそこ積めるし、何よりも大人だから朝早くに出発できた。
そんなわけで俺たちは8月15日に移動のスケジュールを決めて、あれやこれやと計画を練りだした。
まず行き先は、この前に俺とアナカリスさんが行ったことがあり、頂上にいすとテーブルがあると言うことと、比較的手軽に上れると言うことで、地元のT山と決まった。
そして、誰がどんな機材を持ってどこの駅で車に乗るのかなど、いろいろと楽しい計画をしていた。
ところが、そんな話を聞いていて黙っていないのは、問題の○○ハムクラブのおじさん方だった。
お姉さんが運転手をすると言うことが決まったその日から、お姉さんを自分たちの周波数に呼びつけては、
「おまえは学生じゃないんだから」とか、「学生のやることに口出すな」とか、「事故でも起こったら責任はとれるのか」など、よってたかって説教した。挙げ句の果ては「俺たちがこの間呼んでも来なかったのに、何であいつらの運転手なんてやるんだ」などと、露骨に不満を漏らす人までいたと言うことだった。
そこで、こうなったら、無線の上ではお姉さんは行かなくなったと言うことにして、俺が電話でお姉さんと連絡を取ってその日の日程を打ち合わせて何とか計画を実行に移すことができた。
さて、待ちに待った8月15日、朝起きて外を眺めてみると、なんと運の悪いことに外はすさまじい雨と風だった。
これではアンテナも設営できないし、遠くからくるメンバーもが大変なことになると思ったので、俺は中止宣言を出そうとした。しかし、お姉さんが「最悪の場合はあたしみんな迎えに行くから、やろうよ」と行ってくれたので、メンバーはみんな
「こんな日に山に登るなんて危険だ」
と怒り狂う両親を説得して、何とか集合場所までは行けることになった。
さて、お姉さんとの待ち合わせ場所についても雨風は収まる様子など全くなかった。でも、無線でほかのめんばーと交信を続けながら、まずは最初の待ち合わせ場所であるU駅まで向かっていった。
ところがどうだろう、U市内に入ったあたりから雨も風もだんだん静かになり、やがて太陽が顔を出してきた。そして、駅でメンバーを拾った頃には、俺たちの望み通り、空は雲一つない青空になったのだった。
さて、目的地に着くとみんなうきうきしながら荷物を運んで早速アンテナを設営し、7、21、144、430の各周波数帯でCQを出し始めた。
実はTomGは7MHzでCQを出すのはこのときが初めてだったので、友達に話し方や周波数のあわせ方などを教えてもらいながら、たくさんの人と交信することができた。
同じようにして、俺も144MHz帯や21MHz帯でCQを出すのが初めての友達に、話し方や最適なアンテナの向きなどを教えたりした。
特にそのとき、外国との通信経験があったのは俺ともう一人の友達だけだったので、外国と話すことができる周波数帯(21MHz帯)の無線機は大変な人気だった。
実はこのときの写真は、アマチュア無線の有名雑誌に載っていたりする。
ちなみにこのときにも、おじさん方がお姉さんに会いに来たりはしたが、そのこと以外はみんな楽しく無事に終わらせることができた。
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