資料探し


 俺は両親にアマチュア無線を反対されてしまったからといってくじけたりはしなかった。
 それは、普通の人にとってアマチュア無線は確かに「家の中に閉じこもりがちになる」ということはあっても、もともと家の中にいるしか暇つぶしの無い俺たちには決して両親の言うことが当てはまらないという自信があったのだ。そこで俺は、アマチュア無線をやっている先輩と無線クラブの顧問をしていた先生にそのことを話し、両親と話をつけてもらうことにしたのである。これは俺の両親にとってかなり刺激的なことだったらしい。その先輩と先生は本当に熱心に「無線は視覚障害者を孤独にするどころか、逆に世界を広げてくれる便利なコミュニケーション手段である」ということを話してくれたのである。
 そのおかげでやっと俺は両親の反対から逃れることができただけでなく、逆に賛成してくれるようになった。ところがここで大きな問題に突き当たってしまった。その顧問の先生がほかの学校に移動してしまっただけでなく、俺を助けてくれた先輩もその年で卒業だったのである。
 だから受験に必要な点字資料を探すのがかなり大変だった。しかし、俺には唯一の救いがあった。その先生が昔「市川点字文庫」というところで無線の試験に必要な資料を貸し出してくれると行っていたことを思い出したのだった。
 そこで早速市川点字文庫に電話で問い合わせ、試験に必要な資料を手に入れることができた。
 それからの俺は、暇さえあればその本とカセットテープを聞いて真剣に勉強した。多分このときの勉強は、今まで出最大の勉強だったと思う。それほど俺は無線の世界にあこがれていたのだった。

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