就職活動の始まり


 俺が初めて就職活動らしいことをやったのは、確か2年の11月頃だったように思う。
就職担当の先生から港区の障害学生就職支援センターで説明会があるというメールが来たので、クラスの何人かと一緒に出かけていった。
 ちょっと信じられないかもしれないが、クラスのやつらとどこかに出かけたのはこのときが初めてだったのだから、うちのクラスのまとまりの悪さはご想像頂けるだろう。
 そんなことはどうでもいいとして、いつも俺が東京に行くときそうするように、高速バスに乗った配意が、どうも登りの高速が混んでいたので、会場に着くのが遅くなってしまった。
 会場に着くとなにやら勤務地の希望とか、希望職種とか希望の月収などを記入しなければならないらしく、センターの人に手伝ってもらってやったのだが、俺を悩ませたのは希望月収と言うところだった。
それまで就職活動なんてこれっぽっちもやっていなかったから、普通の短大卒の人がどの程度給料もらって働いているかが全く分からなかったのだ。そこでセンターの人に知らないと言えばいい者の、いつもの俺のよけいな見栄は利の癖が出てしまって「16万円程度」とか行ってしまった。ところがどうも世間の人はもう少しもらっている人が多いらしく、
「一応多い方がいいですので18万円と書いておきますね」
と言われたので、恥ずかしいと重いながらもそうすることにした。
 そんなことをしていると、ちょうどいい具合に就職センターの所長の話が終わって、実際の就職経験談の話の時間になった。今回の話は、聾唖者の人で、旅行会社に就職した人の話だった。それによると、
「大変なことはあるけれど、会社の人は親切で、困ったときには助けてくれるので安心して仕事ができる」
みたいな話だった。でも、もし仕事がつらかったとしても、会社の手前そんなことはこの場ではいえないだろうなあとかよけいなことも考えてしまった。
 その話が終わった後は、今度は某有名なコンピューターメーカーの人事部長がやってきて、人を採用するときに企業は何を求めているのかという話になった。内容はその人の昔の就職体験談の話とか、実際の面接の時にどんな話し方をすると好印象を勝ち取れるなどの基本的な話だったが、中でも印象に残っているのが、
「皆さんが本気でその会社に入りたいと思ったら、会社の前で待ち伏せして、実際に働いている人を呼び止めて話を聞いてみなさい。そのぐらいのやる気を見せることです」
という言葉だった。そこまでしないと就職ができないほど厳しいのかと思ったりしたが、確かにそれは一番企業の人に「私はそちらの会社に入社したい」ということを表せるような気がした。
 説明会が終わった後で、今年このセンターに障害者の求人募集を出してきている企業一覧の点訳データがあるというのでそれをもらってきた。
実はほとんどこれを暮れという人はいないらしく、センターの担当者の方を捕まえるのは大変だったが、約30分ほどかかってやっともらうことができた。
 俺の本格的な就職活動はこんな風にして始まったのであった。


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