2月前半の土曜日、うちの学校で障害者採用の経験の多い企業の人事部長の方を先生としてお招きして、障害者の就職に関する説明会と模擬面接会が行われた。
その日俺は、朝からちょっとしたことで迷っていた。それはスーツを着て会場に行くべきか、それとも普通の服で会場に行ってもいいかと言うことだった。しかし、友達の一人がスーツを着ていくというので、俺もまねをしてスーツで行くことにした。
実は俺はスーツなんて入学式以来着たことがなかったので、久しぶりにこれを着ると、「これから本格的に就職活動が始まるんだ」と気の引き締まる思いになったことを覚えている。
説明会は全学科合同で行われたので、いつも俺たちの使っている後者とは違う場所だった。俺は同じ学内ながら、そこが医療系の学科の使っている建物だったので全く言ったことが無く、会場の部屋に着くまでにかなり迷ってしまった。
そんなわけでやっと説明会の会場に着くと、すでに先生のお話は何となく始まっていた。一応時間に遅れないようには行ったのだが、少し前に先生が来ていたので、みんなが始まる前にいろいろと質問をしたから、何となく説明会が始まっていたというのが本当のところらしい。
この説明会では、企業が俺たち新卒者に「何を求めているか」とか、面接の具体的な仕方、そして実際に過去に先生が面接をやっていて、不合格にした具体的な事例など、事細かにそしてためになるお話をしてくださった。
その後、実際に先生の会社で使っている面接質問票を用いての模擬面接が行われた。
このとき俺たちには、模擬面接の順番は全く発表されていなかったので、先生が次に誰を呼ぶか非常にどきどきした。ちなみに最初に当たったのは俺の友達の一人で、彼は声も大きく、はっきりと話す明るい人だったので、ほとんど駄目出しは出なかった。
そんなわけで俺は彼の面接を聞きながら、自分の順番が回ってきたときに話すことをじっくり考えることができた。
このおかげで俺は、初めての面接にもかかわらず、案外落ち着いて話すことができ、駄目出しも1カ所ほどいただいただけだった。それは、
「TomG君は、ちょっと下を向く癖があるから、暗い人に見られてしまうので、できるだけ相手の顔を見るように心がける」
という者だった。確かに俺たち全盲にはその癖があるので注意しなくてはならない。 本当のことを言うともっといろいろと俺の悪いところが聞きたかったのだが・・・。
この面接で先生が一人一人に繰り返し教えてくださったことは、大まかに以下のようなことだったのではないかと思う。
- 大きな声で話す
- はっきりと話す
- 聞かれたことにはできるだけ早く答える
- 回答は前向きなものにする
- 熱意のこもった志望動機を考えておく(これが大切)
- 自分の短所は企業側にとってマイナスにならないような者を選ぶ
- 受験する企業についての質問を必ず用意しておく
- 自分の障害のことについて相手にわかりやすく説明できるようにする
- 保証機器が必要な場合には、その機械の具体的名称と価格を調べておく
- どうしても人の助けの必要なことは、聞かれた時点で正直に話す
この面接で先生から教えて頂いたことは、後に俺が本番の面接を受けたとき、かなりの助けになっている。
面接会が終わった後、事前に提出しておいた履歴書と自己PR文を先生が手直ししてくださった者をいただいた。
お忙しい中遠いところからわざわざ私たちのためにいらして頂いた、テプコシステム開発の清水利勝先生、本当にありがとうございました。