山積みの不採用通知


 就職模擬面接会が終わった次の日から、俺は本格的にWeb上での企業へのエントリーを開始した。
このときまで俺は、企業の採用情報を見たり、障害者を雇用している企業の情報を検索したりすることはあっても、実際にエントリーまではしなかった。
というのは、自分の書いた自己PR文に自信がなかったので、就職説明会での先生からの評価をいただきたかったことと、もし万が一面接までこぎ着けたとしても、面接のイロハも知らないようではしょうがないと思ったからだった。
 さて、俺のエントリー活動は、地道に障害者雇用をやっている企業のページを探し、そこにエントリーシートの送信フォームがあればそこからデータを送ったり、履歴書を郵送してくださいと記載のあるところには履歴書と自己PR文、身体障害者手帳のコピーなどを郵送する形で始まった。
最初は本当に気合いが入っていた。1社1社ごとにその会社のホームページを隅々まで読んでから、その会社に本当に入りたいかどうか考え、入社したいと思った時点で、その企業に会わせて志望動機分を何時間もかけて作成し、自己PR文もいちいち職種に会わせて作り直していた。

 しかし、最初の1社にエントリーした3日後、何気なくメールを開いてみると、思っていたよりも早く、その会社の採用担当の方からメールが届いていた。
その時点で俺はあまりにも早いこの返信メールにいやな予感がしながらも、ちょっとだけ期待してそのメールを読んでみると、やっぱり
「弊社内で十分検討させて頂きましたが、貴意に添えない形となりました」
という不採用通知メールだった。
もちろんこんなメールが届くことは、先輩から聞いた現実の厳しさから予想はしていたが、何せ初めて受け取った不採用通知だけに、かなりショックだった。
そしてその後も、数十回にわたって俺の元には企業にエントリーすると、瞬く間に不採用通知が戻ってきたのだった。

 ここまで不採用通知の山に囲まれてみて、俺の心の中には一つの疑惑が浮かんできた。それは、
「子の企業の人たち、俺の履歴書とか自己PR文見ないで、『視覚障害』という文字だけ見て不採用にしていないか?」
という者だった。そして、次の出来事がこれを俺の中でほぼ確実な者にしてくれた。
 とある企業にエントリーした次の日、「履歴書を郵送してください」というメールが入ってきた。もしかしてこれは少しは脈があるかもしれないと思って履歴書と自己PR文、そして手帳のコピーを企業側の採用担当に郵送したところ、なんと次の日の午前中に、
「履歴書を拝見させて頂き、種々検討させて頂きました結果、誠に残念ながら貴意に添えない形となりました」
というお決まりの内容が返信されてきたのである。
 さすがにこのときは頭に来たが、その一方で、
「向こうがそうならこっちもいい加減にエントリーしてやる!!」
と考えた。

そこでまず最初に、今までの方法では検索が面倒になったので、例の使いにくい障害者のための就職総合Webサイトを利用して、募集職種に「システムエンジニア」とか、「一般事務」などと書かれているIT業界の会社に手当たり次第エントリーすることにした。
 その甲斐あってか何社か履歴書を郵送してくださいというメールをいただいたり、お電話がかかってきて話を聞いて頂いたりしたのだが、不採用通知の山は増える一方だったのである。


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