私がノートパソコンの買い換えを本気で考え始めたのは去年の年末に実家に帰省したときのことだ。
これまで使っていたThinkPad 390X(2626-N0J)に性能的な不満があったわけではない。
Windows98搭載マシーンにしてはフリーズも少なく、きわめて安定して動作していたし、キーボードも打ちやすく、CDロムもフロッピードライブも内蔵していたため、こいつを持って出かければ出先でやりたいことは十分できた。
しかし、唯一の難点はこの図体のでかさと肩にずっしりとのしかかる重さである。
バッテリー含めて3.4kgのその重量は、出かける前に「ああ、こいつ持っていくの面倒くさいなぁ」と思わせるに十分な物だったし、バッグに入れたこのでかい図体は、満員電車の中で人に迷惑をかけるにも十分な物だった。
インターネットがないと数日たりとも生きていけない私にとって、ノートパソコンを持たずに実家に帰るということは考えられない。
以前筑波の短期大学に通っていた頃も、こいつを持って東京行きのバスに乗って出かけることが良くあったが、そのたびに「こいつもう少しなんとかならないかなぁ」と思っていた。しかし、バイトもしていない学生の財布事情もあり、欲しいとは思っていてもできるだけ買い換えは考えないようにしていた。
2004年5月29日日曜日の午前中。
私は迷っていた。
それというのも前々から狙っていたノートパソコン、ThinkPad X40(2371-7VJ)の価格が、目標としていた20万円以下まで下がっていたからだ。
ThinkPadのいちばん小さくて性能のいい物を買おうと考えていたから、ノートパソコンを買うならこれしかない。私はそう思っていた。
今までThinkPadを使ってきて、重さと全体的な図体のでかさ以外に不満はなかったし、何せ私はThinkPadのフルサイズキーボードが好きだった。また、他社製のノートパソコンに多く搭載されているタッチパッドが大嫌いだったのである。
実は2ヶ月ほど前のことになるが、同じX40シリーズの2371-4WJで私は一度大きなチャンスを逃していた。
価格が16万5千円以下まで下がったのに、もう少しもう少しと欲張っているうちに、なんと1日で5000円以上も上がってしまったのである。
社会人になって1年あまり経った今、私の頭の中で、
「いいじゃないか、買っちゃえよ」という言葉と、「少し重いけどあいつ、まだ使えるじゃないか」という言葉が何度も何度も繰り返されるのだった。
そんな押し問答を続けていたちょうどそのとき、秋葉に詳しい友人Mogumogu氏からメッセンジャーが入ってきた。
彼にはこのX40が発売されたときから何かと相談に乗って貰っており、とにかく今がチャンスかも知れないから、在庫状況だけでも店に問い合わせてみたらどうかと言う。
問い合わせるだけだったら別にいいかと気軽にその店に電話してみたのだが、予想以上に大変なことになっていることが判明した。
なんと、在庫が1台しか無いというのだ。しかも「次はいつこの価格で出せるか分からない」とまで言われてしまった。
光ファイバーを引き込んだときにも電話の向こうの人に負けたような気がするが、今回も気が付くと「じゃぁその1代取っておいてください。今日取りに行きますから」と言っているやつがいたというわけである。
そしてその日の午後、ほんとうに秋葉原に行って社会人始まって以来のでかい買い物を決行。ついにNewNoteをゲットしてきた。
ということで以下に使用感などをレポートしていくが、見た目に関することは私には分からないので、その辺は他のサイトのレビュー記事などに譲ることにする。
早速買ってきたマシーンを箱から出して全体をなで回して観察だ。
このマシーンは奥側から手前側に書けて少しずつ薄くなっていくいわばくさび形に近い形をしている。
ThinkPadでありながら、重さはなんと1.27kgしかない。
今までのやつが3.4kgだったのだから2分の1以下である。
大きさもB5ファイルサイズと小さく、持ち歩くにも全く区にならないと思う。
キーボードもThinkPadらしくちゃんとHomeとかEndキーが単体で着いていて、かなり使いやすい。
他のメーカーの物ではFNキーとの組み合わせでこれらのキーを代用する物もあるが、私はキーボード命の人間なので、これはもう論外なのだ。
当たり前のことだが、マウスもトラックポイントになっているので、タッチパッドのように触ってしまってマウスカーソルが意図しないところに飛んでいってしまうようなことはない。
手前側の中央から3センチほど右に行ったところにスイッチがある。これを右側に動かしてふたを開ける。機種によっては左右に開閉スイッチがあり、それらを同時に動かしてふたを開閉する物もあるが、X40はこの一つだけだ。
キーボードの上側には5個のキーがある。
左側の横長のキーは「Access IBM」キーである。これを押すとヘルプのような物が出てくる。
次に3つ丸いボタンが並んでいる。ボリュームダウン、ボリュームアップ、ミュートキーである。
このうち要注意なのがミュートキーで、これを押すとスクリーンリーダーを含め、パソコンからいっさいの音が出なくなってしまう。
このボタンをもう1度押せば解除出来るのであればそんなにあわてないかも知れないが、これはちょっとばかりひねくれていて、ボリュームアップのボタンを押すと解除出来るようだ。
その隣にある四角いボタンが電源ボタンになっている。
次にふたを閉めて左側面を紹介しよう。
上からAC電源コネクタ、ディスプレイコネクタ、USBポートと並んでおり、下に送風口がある。
左側面のUSBポートは二つあり、これらはIBM独自のUSB電源供給に対応しているという話だ。何でも対応ドライブを接続すると、アダプタ無しで利用出来るらしい。
右側面には、上から電話回線につなぐモジュラージャック、LANケーブルをつなぐRJ45ポート、USBポートが並んでいる。
そしてさらに下に小さなカードスロットがある。これはどうもCFカードに変わる最近の企画の小型のカードらしい。どこかで詳細を聞いたことがあるが、忘れてしまったのとこれに対応した製品が余りリリースされていないと言うので今回は省略である。
次に二つ並んだミニジャックがある。上がヘッドフォン、下がマイク端子になっている。
そして一番下におなじみのPCカードスロットという校正になっている。
スピーカーの位置は手前側裏面になっている。要するにパームレストの裏側だ。ここにモノラルスピーカーが内蔵されている。
本体が幾分ゴム足で浮いているため、裏側にスピーカーがあっても音が聞き取りにくいと言うことはない。
それではいよいよコンセントにつなぎ、電源を入れてみる。
しばらく待たされた後、WindowsXPの書記セットアップの音楽が流れてきた。
ここは全盲ではどうがんばっても操作出来ないので、蕎麦にいた弱視の後輩に手伝って貰って設定を済ませた。
後はスクリーンリーダーさえインストールしてしまえばこっちの物である。
さて、実際の使用感だが、最初起動したときには「なんとのろいマシーンだろう」とがっかりしてしまった。
ところが、なんと奇妙なことに、このパソコンは起動してから使えば使うほどレスポンスが早くなる。
どうもこれはハードディスクの回転数に依存しているらしい。
あくまで予測だが、スクリーンリーダーの音声読み上げ辞書をすべてメモリに読み込んでしまうまでは、キーを打ったりカーソルを動かしたときの音声の反応が悪いのだ。
それからこれはどのパソコンにも言えることだが、邪魔なアプリケーションがいくつか常駐している。
スタートメニュー→プログラム→スタートアップの中に「デジタルなんとか」という効果不明の物が入っているのでこれは削除しておこう。
それからタスクトレイに「Access IBM Message center」というアップデートのお知らせなどを出力するプログラムが常駐している。これも余り使えないので、スタート→ファイル名を指定して実行→MSCONFIGを使ってスタートアップのチェックをはずしておくといいだろう。
もう一つの気になる点は、X40はJAWSというスクリーンリーダーをインストールするときにちょっと裏技を使う必要があること。これを知らないで普通にインストールすると、パソコンが固まって起動すらしなくなり、全盲による自力復旧は1度経験した人でないと不可能と思われる。
ということでボーナスを貰う前から使ってしまったのはいいが、持っていくところがないなぁ。
参考リンク
デジタルArenaのレビュー記事 http://arena.nikkeibp.co.jp/rev/pc/20040109/106853/
PC Watch(本田正和の習慣モバイル通信) http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1215/mobile223.htm
IBM ThinkPad X40 開発者インタビュー http://www-6.ibm.com/jp/pc/interview/tpx40/