4人の新しいお友達


 入学してやっと1年がたち、私は晴れて幼稚部2年生になった。
その入学式の日のこと、学校に来て教室に入って私は驚いた。
賢ちゃんが来ていたのもそうなのだが、そのほかに全く知らない子が3人、お母さんに連れられて教室の中にいたのである。
そして、先生は、
 今日から幼稚部には、新しく4人のお友達が入りました。○ちゃんが知っている賢ちゃん、そして、というように、一人ずつ紹介してくれた。
今まで一緒のクラスだった晴美ちゃんとゆきちゃんは、今年から違うクラスに移るということだった。
 私はこんなにたくさんの友達が一度に入ってきたので、もう嬉しくてたまらなかった。保育園にいた頃は、一クラス30人ぐらいは仲間がいたので、正直クラスメイトが少なくて寂しかったのである。
 その年に入ってきた友達は、2人が私と同じ幼稚部2年生、そして後の2人は幼稚部1年生だった。
盲学校などの特殊学校をはじめとする人数の少ない学校では、このように同じクラスに学年の違う仲間が入ってきたりすることは決して珍しいことでは無かった。
特に幼稚部では、人数が多い方が子供達も楽しくできるだろうということで、このようにクラス統合をすることが多いようである。
もちろん読み書きなどの学習的要素の強い授業は学年別に分かれて行うのだが、ホームルームは一緒なのだ。

 それからは毎日が今までよりもずっと楽しくなった。5人もいれば大概のゲームはできたし、おままごとだって役者が多い方が楽しいに決まっていた。
もちろんおもちゃの取り合いなんかは激しくなるが、それもそれでけっこう楽しいものだ。
 みんなでやった遊びの中で一番印象に残っているのは、なんと「税関ごっこ」だった。
この遊びは中学部から幼稚部の授業を教えに来ていた先生が編み出したもので、クッションブロックといわれる大きなブロックで作った船に5人で乗り、日本を出国して海賊に負けないように船を走らせ、外国に油を運ぶというものだった。
海賊の役は先生で、ブロックで造った船を揺すり、油に見立てた小さなブロックを奪おうとする。それを私たち乗組員は必死になって取られないように隠したり飛びかかっていったりして応戦した。
もう一つこれにはルールがある。積んでいるのは油だから、船を壊されてしまったら私たちの負けだった。
そしてもっとも楽しかったのはパスポートのやりとりまであったことだ。
 船が港に着き、乗組員が降りて油を運び込む前に、必ず税関でパスポートに見立てた紙を見せ、先生からの英語の質問に答えなければならなかった。
そのときに答えを間違えたり、パスポートに書かれている内容と答えが違っていたりすると、そこでゲームオーバーになってしまう。しかも一人でも間違った答えをするとゲームオーバーになるのでみんな真剣にその授業の前は練習をやっていた。
ちなみにそのときの先生からの質問はこんな感じだったような気がする。

「What is your name ?」
(名前は?)
「How long will you stay in ○○?」
(どれぐらい滞在の予定ですか)
「こちらに来た目的は何ですか?(英文は忘れました)」

こんな感じの質問に英語で答えなければならないので、幼稚部生だった私たちにはかなりきつかったのだが、みんなして一つの事をやり遂げる喜びを感じられるとても楽しい遊びで、この時間はとても待ち遠しかった。


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