バーチャル社会


 幼稚部1年生になって、私にはもう一つ大きく変わったことがあった。それは賢ちゃんが寄宿舎に入ったことである。
やっぱり同じクラスの友達と遊ぶというのは楽しいもので、それからは晃君と3人でいろいろな遊びをやった。
 その中でももっとも長続きしたのが「バーチャル社会遊び」だった。
これはたとえば、友達と何人かのグループを作り、会社や学校など、いろいろな場を想定して、メンバーに役を割り当て、そして即興で考えて劇を進めていくというものだった。
しかもこの遊び、先生までも加わってくれたりするのでとても面白かった。
 最初に始めたのは、バーチャルお城遊びだった。一人の若い女の先生をお姫様にして、私はなぜか殿様、そして賢ちゃんは大臣だった。
晃君はというとなぜか家来。これって変だよな、だって彼が一番上級生だったんだから・・・。
その若い女の先生のことを、他の先生がいないところではこの3人は「お姫様」と言っていたし、寄宿舎に戻ると「大臣」とか「家来」などと呼んでいた。
一時はそのぐらい、この遊びにどっぷりとはまり込んでいた。
 このバーチャル社会遊びは、幼稚部を卒業した後もかなりの長い間続き、なんと小学5年生の時まで話題を変え品を買え、いろいろとやっていた。
もちろん晃君は私たちが幼稚部の時加わっただけで参加しなくなったが、賢ちゃんとは暇さえあればこれをやっていた。全く本当に私たちも下らないことが好きだったのである。
 バーチャルお城の他にどんなものがあったかといえば、バーチャル宇宙旅行、バーチャル警察、バーチャル放送局などがあった。
バーチャル宇宙旅行は、宇宙戦艦ヤマトをモデルにしたもので、2人が好きな宇宙船の名前を決め、その2隻が力を合わせて地球を救うという劇だ。
二人は宇宙戦艦ヤマトのビデオを借りて、その会話を自分に置き換えて再現してみたり、思わぬアクシデントを作ってこういう時ってどうするんだろうなどと考えて劇を進めたりして楽しんでいた。
バーチャル警察は刑事ドラマの延長で、様々な事件に対して2人の警察官が立ち向かうというもので、ドラマの他に推理小説なども参考にしながら劇を進めていった。このバーチャル警察には、私たちの他に下級生が何人か加わり、捜査班1とか、捜査班2などと言ったようなグループに分かれ、一つの事件に対して二つの物語が進行していくということもあった。
この遊びの最後のネタとなったバーチャル放送局は、アナウンサーやミキサーなどの役を割り当て、テープレコーダーまで使って番組を進行していったり、なんと会社の中での上司と部下の会話まで再現していた。いやぁ、今考えると本当にお恥ずかしい・・・。
ちなみにこの上司と部下の会話のモデルとなったのは、当時放送されていた数々のテレビドラマが中心だった。
このバーチャル放送局遊びが発展して、この後本当にミニ放送局を作ってしまうんだから呆れたものだ。
ミニ放送局については、別項で述べるのでここでは省略する。


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