理科セットと雑誌の付録


 勉強が嫌いだった私が学校で楽しみにしていたものがある。
それは理科セットだ。
空気鉄砲や磁石セット、天秤ばかりや懐中電灯など、勉強道具とは聞いていても私にはそれらのほとんどがおもちゃのように思えたのである。
そんなおもちゃで遊ぶことが勉強なのだから、もちろん理科の時間も楽しみだった。
特に私は懐中電灯や車など、電池で動くものが大好きで、最初は先生に組み立ててもらうのだが、家に戻るとすぐに分解して、どんな仕組みで光るのか、どんな仕組みでこの車は動くのかなど、納得がいくまで研究していた。
 中でも感動したのは、大きなモーターを積んで走る車である。
これはモーター自体を組み立てて動かすことで、モーターの仕組みを学習するためのそのままのセットなのだが、市販されているようなケースに入ったモーターを組み立てるのではなく、材料として付いているのは永久磁石とコイル、そして各種の電極と回転軸などの部品だった。
鉄の棒にコイルを巻いて電気を流すと、不思議なことにそれは磁石になってしまう。その磁石に特殊な軸を取り付け、軸の周りに2枚の板を巻き付けて、そこに電極を接触させ、半回転するごとに極性が変わるようにする。
その電磁石を挟むようにして、二つの永久磁石を置いておくと、なんと不思議なことに、電磁石はずっと回り続けるのであった。
私はすっかりこのからくりの虜になって、2週間ぐらい暇さえあればいろいろなものにこの手作りモーターを取り付けて回しては、周りの友達に見せびらかしていた。

 もう一つこれと似たようなものに、当時学習研究社から発行されていた「科学」という雑誌の付録があった。
小学1年生の頃、私はこの雑誌を購読していたのだが、この雑誌の内容がお目当てではなく、付録の方を楽しみにしていた。
付録は虫かごや体重計、それに豪華なときには映写機まで付いていた。
しかも当時この科学を小学部生のほとんどが購読していたため、科学の届いた日は、みんなで一つの部屋に集まって、いろいろな学年の付録を回しっこしながら遊んでいた。
体重計が付いてくると、みんなで体重測定をしたり、虫かごが付いてくればみんなで虫取りに行った。
そんな中でも特に印象に残っているのが映写機が付いてきた月のことだ。
その映写機は、透き通った紙に文字や絵を描くと、壁に書いたものを映すことのできる単純なものだったが、おもちゃのパッケージやビニールの袋など、いろいろな透き通ったものにみんなで絵を描いて、押入のふすまをはずして用意したスクリーンに映し、手作り映画の上映会をやったのだ。
映写機は1年生の付録と少し前に5年生の付録に付いてきた2種類、合計3台しかなかったので、映写機をもつ3人以外は、セリフを読み上げるいわば弁士さんの役をやって、1日かけてみんなで考えた物語を先生を呼んで上映した。
見てくれた先生はとてもびっくりして、その噂が次の日の泊まりの先生にまで伝わり、4日間ぐらい連続で上映会は行われたのだった。


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