バンド演奏


 小学校3年生時代、担任の石島先生はとてもギターの好きな先生で、お昼休みになると毎日のように音楽室で高校生のメンバーと一緒にバンドの練習をやっていた。
そのバンドは「サンダーノイズ」といって、BOOWYやブルーハーツの曲を中心に演奏しており、先生の作ったオリジナル曲も何曲か演奏していた。
私たち小学生の中でも石島先生のギターのファンは多く、ほとんど毎日お昼休みには小学生が何人か音楽室に行っていた。

 栃木県立盲学校の小学部では、毎年クリスマスになると土曜日の授業を1〜2時間つぶしてクリスマス会が行われていた。
そのクリスマス会の余興を考えることになった私たちは、毎日音楽室で先生のギターを聞いていたこともあって、今年の3年生はバンド演奏をやろうと言うことになった。
 そこでどんな曲を演奏するか選ぶことになり、先生のバンドで演奏しているような、かっこいい曲がいいということで、BOOWYの曲を中心にいろいろとやってみたのだが、どうも小学生にはBOOWYは似合わなかった。
そこでがらっと発想を変え、当時小学部の低学年の中で流行していた「たま」というバンドの「さよなら人類」という曲を演奏することになった。
この「たま」というバンドは、お茶の筒やお菓子の缶などをドラムセットにセットして、楽器として演奏してしまうというユニークなグループだった。
そこで私たちは、茶筒やカスタネット、そしてお菓子の缶などをパーカッションという一つのパートにまとめ、それからキーボード、ドラム、ボーカル、そしてギターの5パートでバンドを結成した。
パーカッションはリズムに乗って踊るのが上手な綾ちゃん、キーボードはピアノを習っているさおりちゃん、ドラムは賢ちゃん、ボーカルが渡し、そしてギターは石島先生だった。
本当は私がドラムを叩きたかったのだが、石島先生が「○○君は声が大きいからボーカルがいいな」ということで、ボーカルをやることになってしまった。
まぁ、ボーカルもそれなりに好きなのでそれはそれで良かったのだが・・・。
 この日から私たちは、お昼休みや学級会の時間、そして時には放課後など、先生の時間が空いているときには毎日のように練習をやった。
そんな中で面白かったエピソードがある。
 その日はクリスマス会が近かったため、算数の時間をつぶして急遽練習をすることになったのだが、なぜか先生のピックが見つからなかった。
そこで先生は1円玉を取り出し、それをピック代わりにしてギターを弾き始めた。
その日の練習はみんな熱が入り、いつもよりも大きな音でジャンジャンと鳴らしていた。そして、授業終了のチャイムが鳴って、先生がギターをしまおうとしたとき、いきなり悲鳴を上げた。
なんと、1円玉は変な形に変形してしまい、先生の手、そしてギターまでもがその1円玉から溶け出したアルミまみれになっていたのである。

 そんな風にしてみんなで一生懸命練習した甲斐あって、当日の私たちの余興は大成功だった。
でも、先生は大事なギターがアルミまみれになってしまったので、その後数日間なんだか元気がなかったのであった。


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