僕のペットはくさ太郎


 ぬいぐるみのところでも書いたが、うちは父が犬猫が嫌いだったため、私はそれらの動物を飼うことができなかった。
その代わり、私は中学1年の夏まで、ずっと亀を飼っていた。
のろまの亀さんということもあり、亀は動きが比較的遅いので、ちょっと目を離した好きに逃げてしまうと言うことがなかったし、何よりもかみついたり指したりしないおとなしい動物だったので、私は小学校1年生の時からずっと亀を飼っていた。
多分中学1年までに、合計7匹ぐらいの亀を飼ったのだと思う。
亀は長生きするのになんでそんなにたくさんの亀を飼っていたかというと、いくらのろまでもやっぱり逃げられるのである。
掃除をしていてその辺に亀をつい転がしてしまって追いかけても、何処を歩いているか分からなくなって逃げられたり、外に置いておいた水槽が台風の雨で増水しているのに気が付かず、そのままほおって置いたら逃げられたりと、私の亀は何匹も何匹も逃げてしまった。
そのたびに私は父にせがんで近くのホームセンターのペットコーナーに行き、新しい亀を買ってきた。
 ところが、うちのような田舎になると、時々野生の亀が田圃や水辺にいたりすることもある。そんなとき両親は、必ずその亀を捕まえてきてくれた。といっても亀もそう簡単には捕まらず、5割方は逃げられてしまう。運が良くて捕獲できたときでも、結構時間がかかったと言っていた。
どうして買ってくればいいのにこんなに野生の亀にこだわったかというと、買った亀は「おとなしくてつまらない」からだ。
亀は甲羅の中に手足をしまうのが特徴なのだが、私を敵だと思って、買った亀はすぐに甲羅の中に隠れてしまう。手のひらの上にのせても怖がって出てこないのである。だから見えない私はその亀が手に触れているときに甲羅の中から出てきてくれないとただの石のように見えるわけだ。
ところが野生の亀は人間を敵とは思っていても、逆に向かってきたり「しゅしゅしゅしゅしゅーー」といって怒ったりするので、野生の亀の方が遊び甲斐があるのである。
特に母方の祖父が釣りに行ったときに捕まえてきた亀はとても凶暴で、安心しているとかみつかれるので怖かったが、それなりに面白いやつだった。
それらの亀に必ず私は「くさ太郎」という名前を付けてかわいがっていたのである。
そんな感じで私のペットはずっと「亀のくさ太郎」だったのだ。
 ところで皆さん、亀って鳴くのをご存じだろうか?
私はこんな風にして7匹ぐらい亀を飼ったのだが、そのうちの3匹ぐらい鳴き声を聞いたことがある。
その声は「ぴーぴー」という感じなのだが、最初これを聞いたときには何処でこの音がしているんだろうと、1時間ぐらいあちこちを探し回った記憶がある。
どうもこの鳴き声は、かめが鼻で呼吸するときに時々出る音らしいのだが、それにしてもなんだかかわいい鳴き声だ。


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