就職活動


 子のページは本サイト内の「就職活動体験日記」の概略である。

 「パソコンに関する仕事につきたい」
これが私が筑波技術短期大学に入学した最大の理由だった。
私が入学する前に受けた大学説明会では、情報処理学科は他学科に比べて就職率が良く、全盲の先輩方が何人も過去に大企業に就職していると聞いていた。
また、大学の方でも学生がスムーズに就職できるように、説明会や模擬面接会、マナー研修などをしてくれるという話だった。
それら就職のことや、パソコンの勉強ができると言うことで、夢と希望に胸をふくらませ、この大学に入学してきたわけだが、Windowsを全く教えない授業、歩行訓練体制の全くない学校、点字が読める先生の少なさなど、およそ視覚障害者のための大学とはほど遠い環境に絶望していた。
でも、これまで就職に関しては実績があるわけだから、何はなくともこれだけは真剣にやってくれるものと思っていた。
 ところが私が就職活動を始めなければならない時期になっても、大学の就職担当の先生は、セミナー案内のメールを送ってくることと、履歴書のフォーマットを教えてくれたこと以外、特に何もしてくれなかった。
就職説明会も行われたが、その説明会も特に視覚障害者の就職に関して何ら配慮されたものではなかった。
 その後いろいろとあったのだが、私はこの学校のいい加減さと、先生の態度に憤慨して、
「こうなったらもう、学校の力なんか借りる門下」
の精神に基づき、自分一人で就職活動を始めることにした。
 まず最初に困ったのは、企業のホームページがあまりにも音声ブラウザで読みにくいと言うことだった。
最近の企業は、インターネットで求人を行うところがほとんどだ。
大概就職専門サイトかその企業のホームページで応募するのだが、それらのページが音声で操作しにくい。
このせいで、間違った情報を入力して大変なことになったり、応募しようとした企業に応募できないと言うこともあった。
中でも頭に来たのは、障害者のための就職総合Webサイトと名乗るホームページが、とある音声ブラウザでアクセスするととたんにそのブラウザがフリーズすることだった。
私は他の音声ブラウザで対応したが、それを持っていなかった友達は本当に大変だったらしい。
 次に私を悩ませたのは、企業への履歴書の送付だ。
何とかネット上での審査は通過し、履歴書を送ってくださいといわれても、私は一人で履歴書を作ることはできても、それを企業に送ることは難しい。
まず、自分の作った履歴書に写真を貼ることと、印鑑を押すことができない。印刷まではパソコンの音声を聞きながら行えるが、当然のことできあがった履歴書は私にとってはつるつるの紙でしかなく、何処に写真を貼ったり印鑑を押していいのか全く分からない。
それから封筒に切手が貼れない。張ることそのものはできても、逆さになってしまったり横を向いてしまったりして、履歴書としてはこれでは格好が悪い。
幸い私の卒検担当の先生は、時間があれば視力を貸してくれたので、これは何とかカバーできた。
 最後の最後まで私を悩ませたのは、試験会場までのガイドヘルプだった。
何度か行ったことのある場所であれば一人で行けるのだが、大概の会社が初めて行く場所なので、誰かに着いていってもらわないと試験時間に遅れる可能性があった。
その前の年までは、先生方が引率していたらしいのだが、なぜかこの年からは何度交渉しても引率をしてくれなかったので、学校は当てにならない。また、友達は敵になる可能性があるのでお願いできなかった。
結局私は視覚障害者外出支援連絡会というボランティアグループの方の助けを借りて、何回かの試験を受けに行った。
 しかし試験まで行ける企業はごくわずかで、ほとんどがネットでエントリーした辞典で、
「誠に申し訳ございませんが、貴殿のご要望に添いかねる結果となりました」
というメールが帰ってくるばかりだった。
それでも私はあきらめずに、何とかネットからのエントリーと履歴書の送付、就職フォーラムへの参加を続けたことで、やっとのこと就職先を決めることができた。
 私が就職活動をして感じたことは、「本当に頼りになるのは自分しかいない」ということと、「決してあきらめないこと」の大切さだ。
他にもいくつかあるのだが、その辺は就職活動体験日記の方をご覧いただきたいと思う。


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