引っ越し、また引っ越し


 小さい頃からたばこが嫌いだったことと、寮の部屋の先輩があまりにも大きな音で音楽を聴くのに嫌気がさして、私は3学期の終わり頃から別のブロックに引っ越したいと考えていた。
昔は少々隣がうるさい程度のことでは怖じ気づかなかった私も、彼女が神経質だったことで、2学期の間に性格が変わってしまったらしい。
彼女Uは、2年ぐらい前に弱視から全盲になった子で、極端に耳が良かった。
だからちょっとした物音が聞こえただけでも目を覚ましてしまうから、隣の部屋の先輩がうるさいというのはかなりの問題があった。
そこで私は、どうせ引っ越しなのだからということで、寮に禁煙ユニットを作ってもらうように上の先生方にお願いして、ついにそれが実現した。
 そこで大学1年の3月後半に別の部屋に引っ越したのだ。
ところが、運が悪いときは徹底的に運が悪いもので、その部屋にいた男は前の先輩よりもさらにうるさい奴だった。
夜中に友達を呼んで共有スペースで酒を飲んで騒いだり、2時過ぎぐらいに音楽をがんがん鳴らしているといったふうだったから、それこそうるさくてうるさくて全く話にならなかった。しかもさらに最悪だったのは、問題の男が1年生の後輩まで悪に染まらせてしまったことである。
でも、せっかく作ってもらった禁煙ユニットなのだからと思い、5月の後半までは何とか耐えてきた。
しかし、さすがにこうも毎日眠れない夜が続くと、私は精神的におかしくなってしまうのではないかと感じるようになった。
そこでまた引っ越しをしようと決心したのである。
今度はうるさくない部屋を選び、両親には悪いと思ったのだが、筑波の中ではそこそこなマンションに引っ越すことにした。
最初、不動産屋さんに言って、全盲の私が住む部屋を探したのだが、
「責任が持てないから」とか、「火事になったら大変だから」
などの理由を付けて、始めにねらいを付けたマンションを断られてしまった。
ところがその代わりにと、担当者の方は私の希望にあったマンションを、学校から徒歩10分県内で見つけてくれた。
しかもそこは、筑波のケーブルテレビの線が来ており、モデムさえつなげればインターネットもできるという最高の場所だった。
 引っ越しの日、私は友達に手伝ってもらい、両親にも来てもらって朝から荷物を運び込んだ。この日のことは過去日記にも残っているので、良かったらそちらの方も読んでみて欲しい。
 このとき入った部屋は、私の望んだとおりとても静かで、管理会社もかなりしっかりした会社だった。
1度だけ隣の人が友達を呼んで飲み会をやっていたのだが、次の日には管理人さんから、
「最近、夜遅くまで友人を呼んで騒いでいる部屋があるようです。
深夜は思ったより声が響きますので、他の部屋の迷惑にならないように気を付けてください」
という紙が入っていたぐらいだ。
もちろん私も一人暮らしなのをいいことに、部屋にBLPCの仲間を呼んだりはしたが、私の仲間は基本的にパソコンマニアなので、ネットをしながらしゃべっている程度だったから、隣から苦情が来ると言うことはほとんど無かった。
周りも静かで、夜寝ると誰にも起こされない限りお昼までだって平気で寝ていられる。
2週間前にはあの部屋に住んでいたことになるのだが、やっぱり今考えても筑波のあの部屋は本当に快適な部屋だったと思う。
それにしても学生時代に2回も引っ越しをする人はなかなかいないのではないだろうか。
正確に言うと、この春にも東京に引っ越したから、大学に入学してから3回も引っ越しをしたことになる。
何度やっても引っ越しというのは大変で、落ち着くまでに最低でも1週間ぐらいはかかる。
この部屋にはまだ入ったばかり、どんな思い出ができるだろうか。


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